broken hallelujah ( composed by fukushima ) 大原 明海

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broken hallelujah ( composed by fukushima )

photo by 大原 明海


2008年6月、イスラエルのヨルダン川西岸で洗礼式を撮影しました。
イエス・キリストはこの川でヨハネから洗礼を受け「神の子」としての受難が始まったとされています。
私は、ユダヤ系カナダ人のレナード・コーエンの音楽に感銘を受け、聖書からの引用が多く含まれるその歌詞の世界を実際に見たくなり訪れました。
帰国後、全ての写真には入国の際に故意にX線が照射されたことによるおびただしい波模様が被せられていました。
ネガが入った袋の表には「×失敗」と書かれて現像ラボから返ってきました。私は恥ずかしさとショックで誰にもそれを見せることもなく箱の中に隠しました。
そのことがデジタルカメラ撮影に移行するきっかけにもなりました。

2011年3月、東日本大震災が起きた数日後、自宅から60km離れた福島第一原子力発電所では津波の影響により放射能が漏れ始めました。
「目に見えない" 線 "に対する恐怖」と対峙し、私はあのイスラエルの写真に被った波が福島県の地図に引かれた原発からの距離半径の線に思えてならず、
箱を開けて1枚1枚写真を見直してみました。そして、その写真を「broken hallelujah」と名付け発表しました。
ありがたいことに多くの共感を得ることができましたが同時に否定的な意見も受け止めなくてはならないこともあり、
どちらにしても自分が被災者であることを思い知らされているようで段々とまた見せるのをためらうようになって行きました。

2020年、震災から9年が経ち日々の生活の中でもあの日のことを口にすることはほとんどありませんが、
どうして私がこの地にたまたま生を受けたのかをよく考えるようになりました。
それが意味や役割のあることならば従おうとこの数年間は被災地区や史跡、自分のルーツに関わる場所を訪れ写真に残すようになりました。
その中でもうひとつの洗礼式(水行)を撮った時にかつてのヨルダン川の洗礼式を思い出しました。
やっと中東の異国と我が故郷が「見えない線」ではなく「浄化への祈り」という言葉で結ぶことができると思いました。
それでも、ふたつの祈りをどう組み合わせるかを考え初めてからまた長い時間がかかりましたが、
コーエンは禅の指導者でもあったことを知り結局答えはその歌の中にあったことに改めて気付きました。
そして、今度こそ自分なりの「broken hallelujah」が制作できたと思っています。

― 大地と海が洗い浄められ皆が故郷へ帰れますように ―                                                         

2020年夏 大原 明海 Akemi Ohara


大原 明海( Akemi Ohara )

1971年 福島県生まれ  

写真を重ね合わせることによって様々な記憶と時間軸を1枚の中に閉じ込めるように作品を制作している。

HP:https://akemioharaphotography.jimdofree.com/

■ Solo Exhibition(個展)
2016 TAMAZUSA / Sony Imaging Gallery Ginza / 東京
2014 Out of blue comes green / Gallery916 small / 東京
2013 Out of blue comes green / Epson Imaging Gallery epSITE / 東京

■ Awards(受賞歴)
2016 PX3 PRIX DE LA PHOTOGRAPHIE PARIS / Bronze Prize(銅賞)
2013 KAWABA NEW NATURE PHOTO AWARD 2013 / Grand Prix(グランプリ)
2012 Einstein Photo Competition X vol . 1 / IMA 編集部賞 (審査員賞)
2011 ONAEBA vol.8 / Review Jury's Prize / Shibuya Seibu (審査員賞)


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