東の風が西の風を制す時 山口 雄太郎

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東の風が西の風を制す時

photo by 山口 雄太郎


2017年、10年振りに訪れた北京で目にした光景が記憶の中にあるこの国のイメージと合致せずに戸惑った。
明るく照らされた空港、綺麗に磨かれた駅舎の床には煌々と光る色とりどりのLED光が反射し、洋服を着た人々がスーツケースを滑らせている。
人民服を着た人は見当たらない。駅の窓口では、オンラインで予約済のチケットを受け取るためにスマートフォンを手に順番を待っている人々の姿があった。
人民元を握りしめ、我先へと切符売場の窓口を目指す人々はどこに行ってしまったのだろうか。

今まで競うように先を目指していた人々が立ち止まり、列を作って順番を待っている様子を目にした時、この国の人々の生活は大きく変わったのだと思わずにはいられなかった。

もう一度この国とそこに暮らす人々の生活を見てみたくなり、2017年4月から5月までの一ヶ月間、上海から新疆ウイグル自治区ウルムチまでをかつてのシルクロード、
そして中国政府が新たに構築している新シルクロード、「一帯一路」の拠点を訪れて撮影をした。

東の上海では不動産バブルで地価が上がり、築30年の中古マンションの一室が1億3千万円程で 売りに出されていて、
物件の内見案内をしてくれた不動産会社の若者は「地方の家を担保に上海の マンションを購入するのが中国人にとっての上海ドリームなんだ」と言った。

西の甘粛省蘭州新区では中国国内西域開発の拠点として、ブルドーザーで丘を削り、レンガ造りの農家を取り壊して 高層マンションが建設されていた。
「私達の国はブルドーザーを使って国を前に押し進めている」滞在先のフロントの女性が言った言葉がとても印象的だった。

タイトルの「東の風が西の風を制す時」は西へ西へと新シルクロード・一帯一路計画を広げようとしている中国の様子を、
毛沢東が1957年にモスクワ大学にて中国人留学生に対して行ったスピーチの一節に重ねた。

「世界はあなたがたのものです。私達のものです。(中略) 世界の風向きは変わりました。
社会主義陣営と資本主義陣営の闘争は、”西風が東風を圧倒するのか、東風が西風を圧倒するかのいずれか”だ。」

この国に吹く風はその土地で暮らす人々に何をもたらすのだろう。
そしてその東風はどこまで届くのだろうか。


山口 雄太郎( Yutaro Yamaguchi )

●略歴
1987 長野県生まれ
2011 神田外語大学外国語学部国際コミュニケーション学科卒業
2014 マグナム・フォト スティーブ・マッカリーワークショップ
東京都写真美術館フォトドキュメンタリー・ワークショップ参加

HP:https://www.yutaro-yamaguchi.com/
instagram:https://www.instagram.com/yutaroyamaguchi/

☆最近の展示
Gallery Nieceグループ写真展 「自由よりも創造を」参加
2020.06.29(月)~07.11(土) 檜画廊(日曜休廊) 11:00-18:30 (最終日16:30閉廊)
東京都千代田区神田神保町1-17
TEL: 03-3291-9364

○受賞
2010 ナショナルジオグラフィック国際写真コンテスト風景部門優秀賞
2015 上野彦馬賞入選

○収蔵
2014 清里フォトアートミュージアム
2017 清里フォトアートミュージアム

○グループ展
2015 ヤング・ポートフォリオ2014展、清里フォトアートミュージアム
2015 上野彦馬賞受賞入選作品 グループ展、東京芸術劇場
2018 ヤングポートフォリオ2017グループ展、清里フォトアートミュージアム
2020 Gallery Nieceグループ写真展「自由よりも創造を」、檜画廊


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