日々の川 平良 博義

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日々の川

photo by 平良 博義


2011年2月雪の日、荒川に沿って歩く。
しばらくすると、ある一帯に小屋が点在していた。
それは雪国の集落を思わせるようで、雪が吹雪くのと相まって、幻想的な光景に魅了された。

ここに住む人々はどんな生活をしているんだろう。最初は興味本位だった。
当時バイトで働いていたコンビニでリュック一杯に廃棄となった食料を詰め彼らの元へ向かった。

「こんにちは」と挨拶すると温かく迎えてくれた。
日々喧騒と雑音が入り混じる都市とは違い、老人達の住む河川敷は静けさに包まれている。
普段の生活では見過ごしてしまうであろう、知る由もなかった老人が私に語りかけるのだ。

静寂の世界の中で確かに聞こえてくる老人達の声。 その声と幾度となく語り合ってきた。
時には酒を酌み交わし夜を明かしたこともあった。

積み重ねられた時間が川の流れに添うように日常へと流れていく。

流れゆく川の対岸が鏡のように両写しになった中で老人達の詩を聞いた。

今この時を生きる姿といずれは消えていく姿を。
それは穏やかな生の紡ぎと音を立てずに忍び寄る死の影だ。

彼らは河川敷に存在し日々を生きている。この作品は彼らが生きている証だ。

彼らに対する偏見や勝手なイメージを取り払って、作品の登場人物でもある私を通して、写真の中にいる老人達を生身の人間として感じて欲しい。


平良 博義( Hiroyoshi Taira )

●略歴
法政大学社会学部社会学科卒業。
四谷三丁目ギャラリーニエプスのメンバー。
ヤングポートフォリオ2014(清里フォトアートミュージアム)入選。
現在沖縄県宮古島や荒川河川敷等をテーマにし撮影している。

○出版物
「日々の川」zen foto gallery刊
URL:https://zen-foto.jp/jp/book/tales-of-the-riverbank

○個展
「PERSONAL PLANET」2010.11 gallery niepce(四谷三丁目)
「MYAHK vol.1」2019.12 @ gallery niepce(四谷三丁目)

○グループ展
タムロンCP+2010連動企画中藤毅彦WS修了展 2010.4 @ギャラリールデコ(渋谷)
ヤングポートフォリオ2014展 2015 @清里フォトアートミュージアム
山本雅紀×瀬頭順平×平良博義写真展 2016.9 @ zen foto gallery(六本木)
「令和元年東京」 2019.7 @ 檜画廊(神保町)

○コレクション
清里フォトアートミュージアムにて「日々の川」から7点収蔵


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