a priori 真月 洋子

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a priori

photo by 真月 洋子


生まれ育った古い日本家屋の壁や床、柱、片隅にある暗がりのなかに、わたし以前の世代が日々繰り返してきた日常が溶け込んで染みつき、
それは知らず知らずのうちに皮膚を通してわたしの内側にも入り込み、わたしの思考の底流のひとつとなっているのを感じます。

歳を経ることによってひとの身体にあらわれてくるしみやしわの様子は、徐々に枯れていく花の花弁や、
歳月が刻みつけてゆく樹々の幹の表面やそのかたちにとてもよく似ています。
そこから、うつろいやすい不安定で不完全な感情を持つひとの身体にも、生物全般に共通する経験に基づかない先天的なものが在るのではないかと考え、
身体と植物の影をからみあわせることによってそれを表したいと思いました。

このシリーズは、 2013年に写真集『a priori innerplants』という形で区切り、一旦制作を止めていましたが、 2018年末から制作を再開しました。
それは、ごく身近なひとが、生でも死でもないグレーゾーンに陥ってしまうという経験がきっかけとなっています。
体を動かすことができない、話すこともできない、コミュニケーションをとる方法のない状態で、
ただ手のひらに伝わってくるわずかな反応を確認するリハビリの日々を過ごすうちにふと、"皮膚は最後の言語なのだろうか?" と考えるようになってきました。
そこから、ひとの皮膚と植物について再考してみたいと思ったわけです。


真月 洋子(Yoko Mazuki)

○略歴
愛知県生まれ東京都在住。
生家である古い日本家屋のなかでのセルフポートレート、ひとの身体が生来持っている"インナープランツ "など、
ひとの 皮膚が捉えている時間や気配、匂いを写真によって表現し各地で発表。
また、 2002年のドイツ・デュッセルドルフ滞在時から映像作品の制作も開始。
翌2003年名古屋市美術館での映像インスタレーションの発表を皮切りに、映像作品も手がけ ている。

HP:http://www.yokomazuki.com/


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