川世界 吉江 淳

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川世界

photo by 吉江 淳


私の生まれ住む町には利根川が流れている。その大きな川は県境にもなっていて、幼い頃の私にとってはまさに地の果てのようだった。
しかし数十年ぶりに川に足を踏み入れたとき、そこには果ての地としてのロマンは無く、目にしたのは大いなる自然と人工建造物、生活排泄物とが混在する光景だった。

それ以来、更新し続ける川岸の景色をおよそ5年おきに撮影してきた。
いわゆる美しい自然風景ではなく、かと言って川の現地報告でも自分への投影でもない…
目の前の川をそのまま写真にするにはどうしたら良いのか、そんな事を草むらの中で夢想していた。

自然の中を歩くとき、価値観がさまざまに変化する世の中に於いて何をもって自然だと考えていけばいいのか意識的にならざるを得ない。
川や草それ自体は私にとっては自然ではない。勝手に発生しているような気になっている草むらが実はそこに生かされ管理されていると言うこと。
様々な建造物がそうした草むらと均衡を保っていること。生活の痕跡としてのゴミや投棄物が上流、あるいは町から流れ着いて草木の茂みの中に隠れていること。
そういったものこそ自分とって自然なのだと言うことに年を越えて河原を歩いているうちに気づかされる。
言い換えれば私の生活やその価値観を基準にしてしか自然は相対化できないのだと時間が教えてくれた。

結局、更新し続けていたのは川岸の光景だけではなかった。それはむしろ私と川の世界との関係そのものだったのではないかと考えている。


吉江 淳(Atsushi Yoshie)

○略歴
1973年群馬県太田市生まれ、現在同市在住。
住んでいる地域の光景を撮影することを課題としている。
写真展多数。
写真集に
「地方都市」蒼穹舎 2014年
「川世界」salvage press 2016年
「出口の町」vol.1 salvage press 2018年
「出口の町」vol.2 salvage press 2019年
「TAIWAN 2011-2018」salvage press 2019年    がある。

HP:http://www.yoshie-atsushi.net
facebook:https://www.facebook.com/atsushi.yoshie.1


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