RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い 高橋 智史

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RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い

photo by 高橋 智史


2018年7月29日、カンボジアは5年ぶりの総選挙を実施した。  

政権に対し、変革を求める最大野党を解党・消滅に追い込み、異を唱える人権活動家を逮捕、投獄し、不都合な真実を伝えるメディアを閉鎖して声を封じ、
横暴に立ち上がる人々の意志を、恐怖の弾圧で駆逐し断行されたその総選挙は、対抗勢力を消し去った中で、125議席のすべてを、
33年間首相の変わらぬ強権支配を続けるフン・セン政権が力で掌握する結果となった。  

カンボジアは、背後に大国の思惑の関与する新たな一党独裁の時代に突入した。  

前回、2013年の総選挙以降のカンボジアは、強権支配という基盤の上に形作られた薄氷の民主を、真に形作ることを願う人々と、
中国主導の巨大経済圏構想との関係性を深めるフン・セン政権という巨大な権力による対立の構図だった。
その対立の現場には、民主の根幹ともいえる当たり前の社会正義の確立を求める人々がいて、時に暴力を伴う弾圧を行使する権力側に対し、彼らは花を持ち、
そして祈りを唱え非暴力で対抗していった。  

カンボジアの平和運動の象徴であり、不当な投獄下に置かれながらも闘い続けた女性活動家テップ・バニーさん、正義を求め、「平和の行進」を行う僧侶たち、
政権と開発業者が結びつく土地の強制収奪問題に立ち向かう土地奪われし人々、暗殺された著名な政治評論家であり民主活動家であったケム・レイさんの姿、
この15枚の写真は、内戦後30年近くを経ても、今だ果たされぬ民主と正義を求め、権力の横暴に命をかけて抗い、屈せざる意志で立ち向かい続けた人々の記録である。  

不条理への怒り、嘆き、叫び。  

私はこれからも、声なき人々の切望を見つめ、彼らが今を生きたその証を、届かぬ彼らの願いを伝え続けていきたい。
そしていつの日か、屈せざる人々の願いがこの国にもたらされた時、私はその歓喜の姿をファインダーから見つめ、シャッターを切っていたい。


高橋 智史(Satoshi Takahashi)

○略歴
フォトジャーナリスト。
1981年秋田県秋田市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。
大学在学中の2003年からカンボジアを中心に東南アジアの社会問題の取材を開始。
2007年4月からカンボジアの首都プノンペンに居を移し、カンボジアの社会問題や生活、文化、歴史を集中的に取材。
現在は、政府と開発業者が結びついた土地の強制収用問題を始めとしたカンボジアの人権問題に焦点を当て、権力の横暴に命をかけて立ち向かう人々の切望を記録し、
Cambodia Daily、CNBC、The Guardianなどの英字メディアを中心に取材写真が掲載されている。
昨年でカンボジア取材通算15年目を迎え、最新の写真集「RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い」を発表し、第38回「土門拳賞」を受賞した。

HP:
http://satoshitakahashi.jp/
Facebook:
https://www.facebook.com/satoshi.takahashi.315

主な受賞歴に、
2014年「名取洋之助写真賞」
2016年「三木淳賞奨励賞」
2019年「土門拳賞」

主な写真展に、
2013年「トンレサップ‐湖上の命‐」(FOTO PREMIOコニカミノルタプラザ)
2015年「名取洋之助写真賞 受賞作品写真展」(富士フイルムフォトサロン東京)
2016年「Borei keila‐土地奪われし女性たちの闘い」(新宿ニコンサロン)
2018年「RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い」(オリンパスギャラリー東京)

写真集に、
2013年「湖上の命‐カンボジア・トンレサップの人々‐」(窓社)
2014年 フォトルポルタージュ「素顔のカンボジア」(秋田魁新報社)
2018年「RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い」(秋田魁新報社)


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