応報と英雄譚 寺本 雅彦

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応報と英雄譚

photo by 寺本 雅彦


神話や伝承、もはや誰が語り始めたかもわからない物語から、我々が今必要としている教訓、あるいは矛盾点を中心に、写真で再構築する作品作りを行っています。
今回紹介させていただくプロジェクトは古代インドの叙事詩ラーマーヤナ。

インド、スリランカ。南アジアを舞台に写真を撮り、それらをパズルのように分解し、あえて解釈の余地が残るような写真を集め再構築しました。
鳩がやがて鴉になる流れ、そして不穏な猿や象は、侵略し大暴れする猿の将軍ハヌマンや、海峡を越えた幾人もの英雄達のメタファーとして存在させました。

人の歴史が始まる頃から現代まで、大義名分があれば美化される戦争や侵略について改めて疑問を感じます。
どちらが先に手を出したのか、どちらがより野蛮なのか。
森の中で暮らすラーマ王子に恋をした鬼の姫、その彼女をいたずらに凌辱した王子への報復に、愛するシータ姫を拉致する羅刹の王ラーヴァナ。
当然のように復讐に燃える王子の冒険と戦争の物語。
インド側、勝者から見た英雄譚は羅刹や夜叉が住むとされたスリランカから見ると侵略ではなかったのか。
どの時代も、どんな正義であっても、そこで暮らす人々の営みを犯す権利は誰にもないものだと信じています。

そして一方のスリランカ。 内戦を終えたばかりで、また今、新たな火種がくすぶり出した小さな島国のナショナリズム。 この土地ははたして誰のものなのか。
総人口で多数派が支配する権利を得るのか。
最後に行われた戦争の勝者が、報復、因果に対する応報があるまでの間、大地の支配者となるのか。
あるいはのその業の輪が回り始まる前から、そこに定住を開始した民のものなのか。

今尚、仏教、ヒンドゥー、イスラムが三つ巴で争う中、ヴェッダと呼ばれる先住民の存在に注目しながら物語を追いました。
ラーマーヤナでは相手側、夜叉とされる狩猟民族。 一番初めにその土地で営みを始め、今は静かに森の中で暮らす始まりの民族。
彼らのような民族は今も世界中で、民族間の覇権争いの外で息を潜めて暮らしています。

そして、これは大国とそのすぐ近くに存在する小さな島国の物語。
遠い日の、遠い国の、物語ではないのかもしれません。


寺本 雅彦(Masahiko Teramoto)

○略歴
大学卒業後2年半ほど海外を放浪。その時の経験をフィードバックする場が欲しいと思い、2004年から横浜でカフェpointweatherを始める。
コンセプトは訪れる側から迎える側に。

この時に旅で感じた世界の多様性を表現してみたいと感じ、ギャラリーとしてお客さんの写真展を数多く開催。また、自身も同店で展示を幾度か開催。

沖縄からインドネシアに続く環太平洋の死生観。
神話や伝承が生き続ける信仰と土壌が持つ力など、
今、僕が暮らす社会があえて避けて通る事柄を、物語を紡ぐように表現していきたいと考えている。

2017年 SOLON やがて海を越えて還る
2018年 ラームシュワラムを越えて

☆pointweather
旅や表現のアウトプットの場として、日常の中で好奇心を刺激する場でありたいと思い営業しています。
時間の流れに左右されない空間。南アジアのカレーを中心にお茶やスイーツも。
写真の展示も承っていますので是非遊びにいらしてください。

〒223−0053
神奈川県横浜市港北区綱島西1−14−18
電話番号:045-542-2694
営業時間:11:30〜21:00(LOは20:00)
定休日:月曜日と不定休

HP:http://pointweather.net/



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