霧のあと - Trace of fog - 阿部 祐己

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霧のあと - Trace of fog -

photo by 阿部 祐己


幼少の頃から足繁く通った霧ヶ峰は、名前の由来どおり、しばしば濃い霧に包まれる。
草原の中で視界が霧に覆われると境目が消え、どこまでも先へ続いているかのような錯覚を覚えた。    

春になると、山には火が放たれる。火入れは人為的に形成された草原の維持に一役買ってきた。
ある年、風に煽られた炎が防火帯を越え、山へ燃え広がる山火事騒ぎがあった。
数ヶ月後、草原は元の緑に姿を変えたが、焼け焦げた白樺の森は数年後に切り落とされ、姿を消した。  

かつて山では山岳信仰が盛んだったという。秋に草原に残る社跡で行われる神事は800年前に武士たちが行っていた狩猟祭の名残でもある。
人々の山への畏敬の念が 今に伝わる一方で、草原には本来の役目を終えた建築群が一つ、二つと増えている。
そのまま放置された無人の建造物は、現代の活動を後世に伝える新たな遺跡のようにも思えた。  

山を覆う霧は一瞬の出来事だ。出ては消え、全てを覆うように見えてもどこかへと消える霧。
人間の活動も同じだろうか。古い史跡も、現代の建物跡も、山の表面に作られた一過性の存在に過ぎない。  

山の持つ長い時間軸の中で、霧の先には、はじまりはなく、終わりもない。
あとに残る、あるいは埋れていく霧のあとを探し、私は道を辿っている。


阿部 祐己

● 略歴
1984年 生まれ
2011年 日本写真芸術専門学校 卒業     
2011年 写真新世紀佳作
2012年 写真新世紀佳作
2013年 キヤノンフォトグラファーズセッション参加
2014年 三菱商事アートゲートプログラム入選
2015年 三木淳賞  

HP:http://yu-kiabe.com/
e-mail:yuukiabe1@gmail.com

● 個展
新しき家(2014年)

●主なグループ展
Jeonju International PHOTO FESTIVAL 招待作家 (全州郷校・韓国 全州市 /2015年)
BIRTH展  (CANSON Gallery Seoul・韓国 ソウル市 /2014年)
三菱商事アートゲートプログラム展 (表参道GYRE /2014年)
キヤノンフォトグラファーズセッションファイナリスト展 (品川オープンギャラリー /2013年)
写真新世紀 東京展・仙台展 (東京都写真美術館・せんだいメディアテーク /2011、2012年)


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