発光幻肢 木村華子 showcase-VOICE-

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発光幻肢

photo by 木村華子


・私のなかで「写真を撮る」ということは、石を拾うという行為によく似ています。
色々なところを歩き、時々仕掛けを作り、日々石を採集するように写真を撮っています。
そうやって集めたものを後日、選り分け磨き少しだけ形を整えたりしています。

選り分ける際の基準は完全な主観なので言葉では説明しきれないのですが、
例えていうならば「普通の石か、一見すると普通の石のようだけれども実は特別な力をもつ貴重な鉱石かどうか」
というところで判断しています。

・2013年ごろから「見えるもの」と「見えないもの」、「存在する」と「存在していない」の間に横たわる
広大なグレーゾーンを写真という媒体の力を借りて触っていたいと強く思うようになりました。

なぜならその行為が私にとって、自分を(もしくは自分が)内包している世界の内外に絶えず眼を向けて問いを投げかけ、
同時に答えを出し続けようとするための一番誠実な手段であると感じたからです。

・1年ほど前、そうやって選び出したいくつかの写真を眺めていると、
唐突に「発光する幻肢をもつ男」がいる情景と、その情景の中に佇む幻肢の彼の主観が
私の脳内に天啓のごとく到来しました。

その瞬間はまるで眼を開けたまま視る白中夢のような印象でしたが、
段々と日が経つほどに細部まで異様な現実味を帯びはじめ、もはや夢と呼べないような手触りを伴って、
実際にその光る幻肢をもつ彼が遠くて近いどこか別の世界にいるのではないかと思えるほど
私の内部で急速に肥大していきました。
そして気づけば私はその写真群に、上記のイメージを更に揺るぎないものにするべく
新たな写真を追加していくようになっていたのです。

・異世界の情景を内包している(と私に感じさせる)写真はたった一度のシャッターの瞬きで生まれた瞬間、
言葉で象られた秩序ある世界/思考を一瞬で突抜け、
言葉が発生する以前の全てのものが等価にギラつきながら渦巻く混沌の地平を私の目の前に叩きつけてきます。

また同時にそれは現実と架空の間にある階調を限りなく広幅化し、
私に自分自身が今どの地点にいるのかさえも分からなくさせます。

それは静かに石を拾うように写真を撮っていた私にとって足下から目眩がするようなカタルシスであり、
今生きている穏やかな日常から自分があっさり滑り落ちてしまうのではないかという恐れでもありました。

・そのため私は日々の日常生活をつつがなく過ごすための平衡感覚を取り戻すべく、
一旦それらのイメージを身体の外側へ切り離し、作品として形を与えることにしました。

その行動はいわば生きていくための個人的なイメージの焚き上げであり、
結果として作品の形を持った一連の写真群「発光幻肢」が、私の立つところとはまた違った他者の世界のなかで、
さらに新たな情景を展開するのか否か...そしてもし新たな情景が立ち現れるのならば、
それは一体どのようなものなのかを私は知りたいと望んでいます。


木村華子

●略歴
京都府生まれ、大阪市在住。
同志社大学文学部芸術学科卒業後、スタジオ勤務を経てフリーフォトグラファーとなる。
雑誌、広告、ウェブサイト、アーティストイメージなど人物撮影を中心に幅広く活動する傍ら、写真作品も定期的に発表している。
シュピーゲル写真家協会会員。 ミュージシャン、ペインター、フォトグラファーで結成された総勢11名のクイエイティブ集団SOULFLEX所属。

●受賞歴
2012 御苗場vol.11 レビュアー賞2部門受賞
2013 KYOTO PHOTO AWARD アワード部門優秀賞受賞
2013 Book Storage ヨーロッパツアーに選出。手製写真集がヨーロッパ各地のArtbook Fairに出展される。

●展示歴
2013年 
ふたり展「KYOTO PHOTO AWARD 優秀賞受賞者展」GALLERY 9 kyoto
御苗場受賞者展「Selected Photographers」72Gallery
グループ展「2013年度 シュピーゲル選抜展」富士フィルムフォトサロン大阪
2012年
グループ展「シュピーゲル2012 第60回展」梅田キヤノンギャラリー
公募展「御苗場vol.11 関西」ギャラリーCASO
グループ展「INTERNATIONAL GROUP SHOW」CAELUM GALLERY newyork
ふたり展「木村<交差>展」 壹燈舍
公募展「御苗場vol.11 関西」 ギャラリー・CASO
2011年 
グループ展「シュピーゲル2011 第59回展」 富士フィルムフォトサロン大阪

HP:http://kimura-hanako.tumblr.com/


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